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言の葉

(34)


最後に、ガンジーは「裁判長!」と呼びかけた。

あなたが取るべき道はただ一つである。もしあなたが司っている法律が悪であって、わたしが実際無罪であると思うならば、あなたは当然職業をなげうって、あなた自身が悪から脱却しなければならない。もし、あなたが実行しようとしている制度と法律とが、インド国民にとって善であり、わたしの活動が国民一般の安寧に有害であると思うならば、あなたは当然わたしにもっときびしい重刑を課すべきである。
法廷は谷間のようにしーんとして、ただガンジーの毅然たる供述に聞き入った。今ここで裁かれているのはガンジーであるのか、イギリス帝国そのものであるのか、人々は深い感動におそわれた。

--- 松本徳松『ガンジー』 ---