わたくしはこのように聞いた。あるとき尊師(ブッダ)は、サーヴァッティー市で、ジェータ林の園にとどまっておられた。そのとき、悪魔・悪しき者は尊師に近づいた。近づいてから、尊師のもとで、この詩句を唱えた。
子ある者は子について喜び、また牛のある者は牛についてよろこぶ。(尊師いわく、)
人間の喜びは、執着する依りどころによって起こる。
執着する依りどころのない人は、実に、喜ぶことがない。
子ある者は子について憂い、また牛のある者は牛について憂う。そこで、悪魔・悪しき者は、「尊師はわたしのことを知っておられるのだ。幸せな方はわたしのことを知っておられるのだ」と気づいて、打ち萎れ、憂いに沈み、その場で消え失せた。
人間の憂いは、執着する依りどころによって起こる。
執着する依りどころのない人は、憂うることがない。