つまり、あれだよ。ほら、人間長い間生きてりゃいろんなことにぶつかるだろう。そんな時に俺みたいに勉強していない奴は、振ったサイコロの出た目で決めるとか、その日の気分できめるしかしようがないんだ。ところが、勉強した奴は自分の頭できちんと筋道を立てて、はて、こういう時はどうしたらいいのかなと考えることが出来るんだなあ。だからみんな大学へ行くんじゃねえか。
さくら「もったいない。兄のような愚かな人間が仏様だなんて。バチが当たりますよ」
御前様「いや、そんなことはない。仏様は愚者を愛しておられます。もしかしたら私のような中途半端な坊主より、寅の方をお好きじゃないかと思うことがありますよ」
おばちゃん「そりゃうちの寅はいい加減な男ですけれど、人の道にはずれるようなことはしませんよ」
御前様「近頃は、金儲けのことしか考えん人間が、この門前町にも増えてきましたから、寅のような無欲な男と話をしていると、むしろほっといたします。あれは、あのままでいい」