聖書の間違い

ペテロの離反とイエスの予言

--- いつ鶏が鳴いたか ---

佐倉 哲


イエスが逮捕されたとき、イエスの弟子ペテロは護身のために自分はイエスなど知らないとイエスを否定する、そんな物語が福音書には記録されています。この物語によると、イエスは、逮捕される少し前に、ペテロの離反行為についてある予言をしていました。ところが、イエスの予言は外れたのです。


イエスが逮捕されたとき、イエスの弟子ペテロは護身のために自分はイエスなど知らないとイエスを否定する、そんな物語が福音書には記録されています。この物語によると、イエスは、逮捕される少し前に、ペテロの離反行為についてある予言していました。ところが、イエスの予言は外れたのです。というのは、イエスはペテロが鶏が鳴く前に三度イエスを知らないと言うだろうと予告したのに、マルコの記述によると、鶏はペテロがイエスを知らないと一度言ったあと、すぐ鳴いてしまうのからです。


イエスの予言

マタイやルカやヨハネの福音書によると、鶏が鳴くまでにペテロが三度イエスのことを知らないと言うだろう、とイエスは予言しました。

マタイによる福音書 26:34
イエスは言われた。「はっきり言っておく。鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしのことを知らないと言うだろう」。


ペテロの否定と鶏の鳴き声

ところが、マルコの記述によると、鶏はペテロがイエスを知らないと一度言ったあと、すぐ鳴いてしまうのです。

マルコによる福音書 14:66-72a
ペトロが下の中庭にいたとき、大祭司に仕える女中の一人が来て、ペトロが火にあたっているのを目にすると、じっと見つめて言った。「あなたも、あのナザレのイエスと一緒にいた。」しかし、(1)ペトロは打ち消して、「あなたが何のことを言っているのか、わたしには分からないし、見当もつかない」と言った。そして、出口の方へ出て行くと、鶏が鳴いた。女中はペトロを見て、周りの人々に、「この人は、あの人たちの仲間です」とまた言いだした。(2)ペトロは、再び打ち消した。しばらくして、今度は、居合わせた人々がペトロに言った。「確かに、お前はあの連中の仲間だ。ガリラヤの者だから。」すると、(3)ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「あなた方の言っているそんな人は知らない」と誓い始めた。するとすぐ、鶏が再び鳴いた
このために、マタイやルカやヨハネの福音書のイエスの予言に関する記述が正しく、かつ、マルコのペテロの否定と鶏の鳴き声に関する記述が正しいとすると、「鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしのことを知らないと言うだろう」と言ってしまったイエスは偽予言者となってしまいます。イエスを偽予言者としないためには、これらの二つの記述のうちどちがかが間違っていることを認めねばなりません。