聖書の間違い

「ヨハネの第一の手紙」の間違い

--- 終末はヨハネの時代には来なかった ---

佐倉 哲


99年3月5日

終末とは、超自然的神の力によって、地上に天変地異が起き、悪の世界が滅び、神の支配する新しい世界がやって来る、歴史の終わりのことを意味します。新約聖書の記述によると、初期のクリスチャンたちは、彼らの生きていた時代がその「終わりの日」である、と考えていました。たとえば、「ヨハネの第一の手紙」を書いた著者も、てっきり彼の生きていた時代がその「時」であると思い込んでいました。ところが、それは間違いでした。


福音書に描かれているイエスは「世の終わり」が来ることを予言し、その前兆を語っています。

イエスがオリーブ山で神殿の方を向いて座っておられると、ペトロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかに尋ねた。「おっしゃってください。そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが実現するときには、どんな徴があるのですか。」イエスは話し始められた。「人に惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがそれだ』と言って、多くの人を惑わすであろう。戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞いても、慌ててはいけない。そういうことは起きるに決まっているが、まだ世の終わりではない。民は民に、国に国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、飢饉が起こる。・・・(中略)・・・それらの日には、神が天地を造られた創造の始めから今までなく、今後も決してないほどの苦難が来るからである。主がその期間を縮めてくださらなければ、だれ一人救われない。しかし、主はご自分のものとして選んだ人たちのために、その期間を縮めてくださったのである。そのとき、『見よ、ここにメシヤがいる』『見よ、あそこだ』と言う者がいても、信じてはならない。偽メシヤや偽預言者が現れて、しるしや不思議な業を行い、できれば、選ばれた人たちを惑わそうとするからである。だから、あなたがたは気をつけていなさい。一切のことを前もって言っておく。それらの日には、このような苦難の後、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は空から落ち、天体は揺り動かされる。そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗ってくるのを、人びとは見る。」

(マルコによる福音書13:3-26)

初期のクリスチャンは、この「世の終わり」が、彼らの生きている時代にもうすでに来ている、と思い込んでいました。たとえば、ヨハネの手紙の著者は、つぎのように述べています。
子供たちよ、終わりの時が来ています。反キリストが来ると、あなたがたがかねて聞いていたとおり、今や多くの反キリストが現れています。これによって、終わりの時が来ていると分かります。

(ヨハネの手紙 一、2:18)

もちろん、このヨハネの思い込みは間違っていました。反キリストはいつの時代にもいましたが、「太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は空から落ち、天体は揺り動かされる。そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗ってくるのを、人びとは見る」--- そんな「世の終わり」は、彼の時代に来なかったのはもちろんのこと、その後2000年間、今日に至るまで、いちども起こりませんでした。

このように、聖書(「ヨハネの第一の手紙」)の「終わりの時」に関する記述は、真理を述べたものではなく、あるひとりの信者の勝手な思い込みを述べたものにすぎませんでした。このため、「聖書はあやまりなき神の言葉である」というドグマが間違っていることが分かります。