聖書の間違い

イエスの系図の間違い

佐倉 哲


マタイによる福音書の1章1節から始まる イエス・キリストの系図に間違いがある、というお便りをいただきました。



平田さんより

00年7月26日

ヴァチカンが認めている聖書の間違いとは、和田 誠神父の口からヴァチカン放送(短波で放送)で聞いたのですが、マタイによる福音書の1章1節から始まる イエス・キリストの系図に間違いがあると言っておりました。

すなわち、1章17節 こうして、全部合わせると、アブラハムからダビデまで十四代、ダビデからバビロンへの移住まで十四代、バビロンへ移されてからキリストまでが十四代である。 ここで、和田 誠神父は、十四代、十四代、十四代と三回書いてあるが、一番最後の十四代は数えてみると十三代しかないことがわかる と言いました。よって 聖書には科学的間違いがあると。このことは、このHPにリンクしている聖書薮にらみにも指摘してあります。だからポピュラーな間違いだと私は思うのですが誰も指摘しませんので、是非佐倉さんに取り上げて貰ってほしいのです。よろしくお願いします。

マタイによる福音書1章12節からの名前を列挙してみます。十四代が三回ですからアブラハムからイエス・キリストまで42人いなければなりませんが、下記に示すように41人しかおりません。1人足りません。系図の人数はやはり間違いと思われます。では数えてみましょう。    

     アブラハム(1)イサク(2)ヤコブ(3)ユダ(4) ペレツ(5)ヘツロン(6)アラム(7)アミナダブ(8)ナフション(9)サルモン(10)ボアズ(11)オベド(12)エッサイ(13)ダビデ(14)ソロモン(15)レハブアム(16)アビヤ(17)アサ(18)ヨシャファト(19)ヨラム(20)ウジヤ(21)ヨタム(22)アハズ(23)ヒゼキヤ(24)マナセ(25)アモス(26)ヨシヤ(27)エコンヤ(28)シャルティエル(29)ゼルバベル(30)アビウド(31)エリアキム(32)アゾル(33)サドク(34)アキム(35)エリウド(36)エリアザル(37)マタン(38)ヤコブ(39)ヨセフ(40)イエス・キリスト(41)です。

41人しかいません。よってバビロンへ移されてからキリストまでが十四代である。のは間違いとなります。


作者より平田さんへ

00年8月19日


ご指摘の通り、マタイによる福音書によれば、つぎのようになっています。

アブラハムの子孫、ダビデの系図。アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれた。・・・・エッサイにダビデ王が生まれた。ダビデに、ウリヤの妻によってソロモンが生まれ、・・・。ヨシヤに、バビロン移住のころエコニヤとその兄弟たちが生まれた。

バビロン移住の後、エコニヤにサラテルが生まれ、サラテルにゾロバベルが生まれ、ゾロバベルにアビウデが生まれ、アビウデにエリヤキムが生まれ、エリヤキムにアゾルが生まれ、アゾルにサドルが生まれ、サドクにアキムが生まれ、アキムにエリウデが生まれ、エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。

それで、アブラハムからダビデまでの代が全部で十四代、ダビデからバビロン移住までが十四代、バビロン移住からキリストまでが十四代になる。

(1章1〜17節、新改訳)

数えてみると、確かに、アブラハムからダビデまでが十四代、ダビデの子ソロモンからエコニヤまでが十四代、エコニヤの子サラテルからイエスまでが十三代になっていますから、17節の十四代、十四代、十四代というのは間違っていることになりそうです。

十四代、十四代、十四代と三つ続けば、不思議な数の一致のように思われ、まるでイエスの誕生が神によって予定されていたかのごとき印象を与える、とマタイは思ったに違いありません。ご存知のように、福音書は彼らの教祖をキリスト(救い主)に仕立て上げるための「証明」に、さまざまな無理な解釈を持ち込んでいますが、これもその傾向のひとつとして理解することが出来ると思います。「これらのことが書かれたのは、イエスが神の子キリストであることを、あなた方が信じるため」であるとヨハネが告白していますように(ヨハネの福音書20:31)、福音書は、読者をしてイエスがキリストであることを信じさせるように工夫を凝らした宣伝文書であって、真実を知らせるための書ではないからです。

おたよりありがとうございました。