霊能者の予言というものは、しばしばあいまいで、あとからどうにでも解釈できるようなものが多いのですが、あいまいなものばかりでは相手にされませんので、たまには、具体的なことを言わねばなりません。そこで、その部分に注目して調べてみると、事実とあわない予言がいくらでも見つかります。エドガー・ケイシー(1877〜1945)は、人間の霊的能力を信じたい人びとの間では「今世紀最大の予言者」などといわれていますが、今回、わたしが調べたところによると、かれの予言はデタラメだらけでした。ここでは、日本と1998年に関してケイシーが予言したことをいくらか紹介し、かれの予言なるものがいかにデタラメなものであったかを示したいと思います。


エドガー・ケイシー(1877〜1945)は、米国の霊能者で、催眠状態のなかで、過去や未来や遠隔地について語った、と言われています。その中には、古代のエジプトのことや、失われたアトランティス文明のことや、来るべき終末の大いなる破滅や、キリストの再臨などについての言及があります。それらはケイシーの「リーディング」と呼ばれ、かれの秘書が書き取っており、現在でもケイシーのライブラリーに保存されており、一般に公開されています。

わたしは、ケイシーの全てのリーディングを納めたCDを手に入れ、とくに、日本や1998年に関する予言を調べてみました。以下はその一部です。

(1)日本に関する予言(その1)

1932年2月8日、ケイシーは、ヴァージニアの自分のオフィスにおいて、1936年までに起こるであろう世界的な出来事を予測して、つぎのような質問に答えています。

(質問)これから50年間、人類の繁栄にかかわる重要な出来事を予測していたでけませんか。
(回答)それは、国際関係において現在要因となってい多くの力が分解する形で、36に世界にやって来るであろう大いなる破滅以後を予測するのがもっとも良いと思います。・・・・
(質問)どの力が1936年に分裂するのか名前をあげてください。
(回答)むしろ、1936年までに(起こる)でしょう。ロシア、合衆国、日本、英国すなわちイギリス帝国でしょう。
(質問)だれが支配力となりますか。
(回答)それは力の源に誰がより近いかによります。
(質問)中国と日本の関係はどうなりますか。
(回答)国際干渉によって、中国の一部で人口が復員されるとともに、中国か日本のどちらかが国家としての究極的破滅を迎えることでしょう。

(Edgar Cayce, READING 3976-10)

この予言がなされた1932年の前年の9月には満州事変がおこり、同年10月関東軍は錦州を爆撃しました。32年正月28日には日本軍と中国軍が上海で直接衝突します(上海事変)。ケーシーの予言はこのような時世を背景におこなわれたものです。もちろん、問題のでたらめな予言は、1936年までに中国か日本のどちらかが国家として消滅する、という予言です。

(2)日本に関する予言(その2)

第二次世界大戦が始まって、まだあまり経っていないころ、1940年12月25日クリスマスの日、ケイシーは、ヴァージニアの自分のオフィスにおいて、日本について次のような予言をしました。

シンガポールの崩落をわたしは予言します。また、オーストラリアとインドがジャップによって攻撃されることをわたしは予言します。・・・かれら[日本軍]はおそらくヒットラーの軍と合同するでしょう。東京が戦火に包まれるのが見えます、しかしそれが日本の崩壊をもたらすようには見えません。わたしたちの愛する合衆国においては、わたしたちの飛行機工場が爆撃されるのが見えます。また、労働問題が見えます。・・・この戦争は、目に見えない神の霊の力がこの地には存在するのだという事実がすべての国に啓示されることによって、その終結を見ることになるでしょう。

(Edgar Cayce, , READING 1931-3)

この予言がなされた1940年の前年、9月にはドイツはポーランドを侵攻し第二次世界大戦が勃発しました。同年11月ソ連はフィンランドに侵攻し、国際連盟はソ連を除名処分にしました。40年になると、1月には日米通商航海条約が失効します。4月ドイツはデンマークとノルウエーを、5月にはオランダを侵攻しました。日本は9月北部インドシナに侵攻し、9月22日に日独伊の三国同盟が結成されます。11月にはハンガリーとルーマニアが日独伊三国同盟に加盟します。11月には日本では期限2600年の祝賀行事が大々的におこなわれました。同11月にアメリカは三選したルーズベルト大統領が、民主主義を守るために米国が兵器援助をすることを発表しました。

上記のケーシーの予言はこのような時世を背景におこなわれたものです。もちろん、日本がオーストラリアを攻撃するとか、日本軍とヒットラーの軍とが合同するとか、日本が米国本土の飛行機工場をを爆撃するとか、「目に見えない神の霊の力がこの地には存在するのだという事実がすべての国に啓示されることによって」戦争が終結するとか、これらすべての予言は、まったくのでたらめでした。


(3)1998年に関する予言(その1)

ケイシーは、いわゆる「世の終わり」が、1958年から1998年までの40年間に起こるであろうことを、しばしば予言しています。1934年1月19日、ニューヨーク市のパーク・アブニュー410番地で、この期間の出来事に関して次のような予言をしました。

物理的な変化に関して言えば、アメリカの西側の一部分の大地が分裂し、日本ではより大きな部分が海に沈没するであろう。ヨーロッパの上の部分では一瞬のうちに変化が起きるであろう。アメリカの東側の海からは陸が隆起するであろう。・・・これらのできごとは58年から98年の間に始まるだろう。

(Edgar Cayce, , READING 3976-15)

もちろん、アメリカ大陸の東側の海からあたらしい陸地が隆起することなどなく、おなじくアメリカ大陸の西側の一部が分離してしまうこともなく、また、日本が海の中に沈没することもなく、あと10日ばかりで、1998年が終わろうとしています。すべて、ケイシーのデタラメの予言でした。

(4)1998年に関する予言(その2)

また、ケイシーは、1932年6月30日、自宅で、1998年に関して次のような予言をしました。

それが起きるのはこの期間、すなわち1998年に、メシア(救い主)が出現するときです。

(Edgar Cayce, , READING 3976-15)

これは、ケイシーの予言の中でも有名なもので、ケイシー関連の書にしばしば言及されています。たとえば、カーク・ネルソンの『キリスト再臨の1998年』などでは、星座の関係から特定の日を導きだし、キリストの再臨は今年の9月30日という日だと断定しています(Kirk Nelson, The Second Coming 1998, ARE Press, 82ページ)。

もちろん、今年の9月30日はとっくにすぎましたが、キリストが再臨するどころか、まったくなにも特別なことも起こりませんでした。これも、ケイシーのデタラメ予言のひとつでした。

(5)結論

予想はしていましたが、「今世紀最大の予言者」などと一部の人びとによって信じられていたエドガー・ケイシーの予言は、今回わたしが調べてみた結果、まったくデタラメだらけであることが、やはり、あきらかとなりました。

多くの「世の終わり」予言者がそうするように、ケイシーも、自分の予言のウソがばれる頃にはもうこの世にはいなくなっているような、そんな時期(1998年)を世の終わりと予言していました。当然のことながら、ケイシーの予言は何も当たることなく、1998年も終わろうとしています。お前の予言はデタラメではないか、と文句をいう相手はもうこの世にはいませんが、いまでもケイシーを「今世紀最大の予言者」などともちあげて、霊能力のようなものがまるで事実であるかのように宣伝をする人達が日本でも後を絶ちません。このようなものが日本において実に軽薄な精神状況(オウムを生み出す精神状況)を生み出しているように思われます。そのため、このくだらないエドガー・ケイシーの予言も、いまもう一度、そのデタラメさを明るみに出してみることも無駄ではないだろうと思います。

もし、ご自分で確かめて見たいと思われる方は、こちらでその資料が手に入ります。